病院選びからサポートしましょう
うつになると、判断力や行動力が落ちてしまうもの。また、「放っておいてほしい」と思う一方で、「助 けてほしい」と思っていることも少なくありません。身近な人がうつになったら、回復のためのサポートをしましょう。たとえば、「病院選び」。通いやすく、専門医のいる医療機関に電話して予約し、同行してください。本人の状況を客観的に把握している家族や友人が同席することで、医師も診察しやすくなります。
病院に連れていくとき
「最近、眠れていないようだし、元気がないから、病院に行ってみない?」と声をかけてみてください。「大丈夫だから」と受診をためらっている場合は、「病院で、何でもないことが確認できれば、私も安心だから」という投げかけ方をしてみましょう。
本人に対する接し方
周りの人が普段どおりにしている方が、本人をラクにします。また、病人だからと家族が何でも言うことを聞いていると、「病気でいた方がいい」と感じてしまい、回復が遅れることも。対応に迷ったときは、家族だけで主治医に相談するのもよいでしょう。
つらいようなら入院も
「一人暮らしで、家族のサポートが受けられない」「家にいても心身が休まらない」といった場合は、入院もたいへん有効です。治療に集中するためのひとつの方法として、周りからも勧めてみてください。
上司に相談し、仕事量などを調整しましょう
薬でうつの症状が落ち着いても、周りの環境がまったく変わらなければ、症状は再び悪化してしまいます。不眠などの症状で仕事に支障が出ているのであれば、勤め先の直属の上司に勇気を持って話してみましょう。「なんとか一人で乗り越えられるはず」とがんばりすぎると、結局無理を重ねてしまうもの。仕 事の量を減らしたり、部署を異動したりすることが、回復を支える手立てになります。
仕事を休まず、通院する場合
仕事を休まずに通院できる段階では、医師が診断書を書くことはありません。しかし、残業を控えるなどのアドバイスをメモに書いてもらうことは可能です。上司に治療中であることを伝え、そのメモを見せて仕事の負担がかかりすぎないよう配慮してもらいましょう。
同僚に理解を求めましょう
仕事量を減らす分、同僚にしわ寄せがいく場合があります。病名を告げなくてもいいですが、同僚には治療中であることを伝え、理解を求めましょう。「○○さんは体調を崩しているため、しばらく残業を控えます」など、上司からフォローの言葉をもらうことも大切です。
医師に従って、休職の判断を
休職の判断は、症状を診ている医師の判断に従いましょう。一般にうつ病の場合、最低でも1ヶ月の休職期間が必要とされています。特に最初の1週間は、家事などもせず休養に専念することが大切です。一人暮らしの人は、家族や友人に相談し、サポートしてもらいましょう。
医療費の助成やサポートを利用しましょう
うつ病は、風邪や骨折とは違い、「いつまでに治る」というものではありません。また、治療が長引き、休職するようになると、症状に対する不安だけでなく経済的な不安も募るでしょう。そんなときに心強いのが、公共のサポートシステム。治療費の自己負担額を軽減できたり、給料の何割かの支給を受けられたりする制度もあります。また、多くの保健所ではメンタルヘルスの相談に応じてくれるので、ぜひ活用しましょう。
傷病手当制度
健康保険の被保険者(被扶養者を除く)が、病気やケガのために仕事を4日以上休み、給与が減ったり支給されなかったりした場合、欠勤1日につき標準日額の3分の2の金額を支給する制度です。適用条件など、詳しくは会社の総務担当者に確認してみてください。
自立支援医療費制度
精神疾患により継続的な通院を要する人などが、必要な医療を受け続けられるよう支援する制度です。医療費の自己負担額が原則として1割に減額され、所得に応じて1ヶ月あたりに支払う金額にも上限が設定されます。詳しくは、自治体(市区町村)の申請窓口にお問い合わせください。
保健所などに相談しましょう
多くの保健所では、定期的に専門医などによる「こころの健康相談」を実施しています。また、自治体(市区町村)の精神保健福祉センターなどでは、「通勤訓練」や「グループミーティング」などを通じて、社会復帰に向けたリハビリを支援しているところも。ホームページなどで確認してみましょう。
症状に合わせ、抗不安薬などと組み合わせます
うつ病の場合、最初にSSRIやSNRIといった抗うつ薬が処方されるのが一般的です。飲み始め時の不安感や焦燥感を抑えるために抗不安薬を組み合わせたり、副作用を抑えるために胃薬を用いたりと、症状によって薬の種類や服用量が調整されます。抗うつ薬は、症状が安定するまで数ヶ月~年単位で飲み続けることになる薬。副作用や体調の変化など、気になることがあったら、自己判断で薬の量を減らしたりせず、必ず医師に相談しましょう。また、抗うつ薬そのものに依存性はなく、「服用するとやめられなくなる」といったことはないのでご安心ください。
SSRI |
脳内セロトニン濃度を高め、不安や抑うつ感をやわらげる。 |
副作用は少ない。飲み始めた1~2週間ほどは、吐きけ、むかつきなどの消化器症状があらわれやすいが、継続して飲むと治まる。 |
SNRI |
脳内セロトニンとノルアドレナリンの濃度を高める。うつ症状をやわらげ、意欲を高める。 |
副作用は少ない。ただし、頭痛、口の乾き、排尿困難などの副作用の報告あり。 |
NaSSA |
2009年から使用され始めた新薬。ノルアド レナリンやセロトニンの神経伝達を強める。 |
強い眠気、口の乾き、便秘、倦怠感 |
三環系坑うつ薬/四環系坑うつ薬 |
従来から使用されてきた抗うつ薬。うつ症状をやわらげ、意欲を高める作用が強いが、副作用が出やすいため、飲み続けにくい。SSRI やSNRIでは効果が出ない場合に用いられることが多い。 |
起立性低血圧、口の乾き、便秘、排尿困難、眠気、体重増加など |
・トラゾドンなど |
脳内セロトニンの量を増やして、神経の働きを改善し、不安感をやわらげる。 |
眠気 |
・スルピリド |
脳の活動を高めてうつ症状をやわらげる。意欲や食欲を改善するとともに、胃腸の不調や頭痛、めまいなどにも効果がある。 |
眠気、便秘 |
抗不安薬 |
脳の興奮を抑え、緊張をやわらげ、不安や恐怖心を軽減させる。 |
眠気、ふらつき、脱力感など |
非定型抗精神病薬 |
抗うつ薬だけで効果が不充分なときに増強療法として使用される。 |
眠気、脱力感など |
βブロッカー |
交感神経β受容体の働きをブロックする薬。手 の震えや頻脈、動悸、発汗、緊張をやわらげる。 |
だるさ、めまい、息苦しさが起こることがある。低血圧、ぜんそくの人には使用しない。 |
睡眠薬 |
脳神経の興奮を静めて、緊張や不安を取り除き、寝つきをよくする。 |
眠気、ふらつき、倦怠感など |
抗てんかん薬 |
神経細胞の興奮を静め、気持ちを安定させる。 |
眠気、ふらつき、薬による発疹など |
(※)テグレトールとデパケン、ラミクタールの薬の効果・副作用には個人差があり、理論通りにいかないことも多いです。主治医とよく相談しながら決めていきましょう。テグレトールは、気分安定薬としても処方されます。